森岡督行(もりおか よしゆき)
森岡書店 店主・ブックディレクター

1974年生まれ、山形県出身。神保町の古書店に勤務の後、独立。茅場町で写真集や美術書を主とする古書店を開業。2015年5月、銀座の地に移転。一冊の本から派生する作品を展示しながら、展示期間中その本だけを売る書店に。2017年6月、森岡書店 総合研究所を開設。著書多数。

森岡書店
東京都中央区銀座1-28-15
鈴木ビル1F
03-3535-5020

_INTERVIEW #001
YOSHIYUKI MORIOKA

神保町の古書店を経て茅場町で独立、後の2015年5月に銀座一丁目の由緒あるビル一階に移転。一週間ごとに異なる一冊の本だけを取り扱う、なんともユニークな業態の森岡書店。その店主にしてブックディレクターの森岡督行さんは予てからCOOHEMのジャケットを御愛用、服/ルーツ/モノづくり/日本/世界について話を伺った。

服に心が動く時

服を買おうと思うのは、その服を着た状況が思い浮かぶような時、イメージが立ち上がる時でしょうか。或いは、その服を着たいと思って気持ちが弾む時。COOHEMは目にした途端、テクスチャーや色の面白さが際立っていたので手に取りました。形の良さ、流線形のフォルムやシャープな曲線美がいい。ボタンの色合いも好きですね。着てみると、動きやすいですよね。普段はシンプルで淡いトーンの服が多いのですが、柄入りでデザインの要素が強い(COOHEMの)ジャケットはトークイベントに出演するような時にはちょうどいい感じです。

ルーツは野性的な少年時代に

生まれ育った寒河江というのは、(米富繊維がある)山辺町の北側に隣り合わせた自然豊かな場所です。
夏には川で泳いで鮎を突いて捕って、焼いて食べたり、昆虫を追いかけたり…狩猟と採集、縄文時代!?のように。
そんな縄文系の生活を現実社会で形にしやすい、実現できるのが東京だと思います。気になる方に声を掛けたり、この企画がいいと思ったらその人物を訪ねてお願いしたり…子供の頃と同じように、今でも狩猟採集しているんです。少し話は逸れますが、そもそも都会には自然が無いという過信や思い違いが多い気がしているんです。例えば東京は、大きな岩場を切り崩した石窟。地下鉄は洞窟。銀座界隈でもよく目にする工事現場で溢れかえっているのは砂利、ガラスだって石からできていて天然由来。ちょっと放置された場所では雑草が目一杯に育ち、勘弁して欲しいと思うくらい雑多な虫もいる。ある意味、東京は実に有機的な街、そして大自然だと思っています。

モノづくりに照らし合わせて眺める日本と世界

日本のモノづくり、手仕事は本当に宝だと思います。明治維新から150年が経ちましたが、日本人は次々となだれこんでくる文明と文化をキャッチアップして持ち前の器用さを発揮して真似するどころか、それ以上のクオリティに昇華させました。逆行して、浮世絵などは欧米に流出して様々な影響を与え、感化しました。世界の先々へ旅しましたが、日本人ほど日々の暮らしに美意識を措いている民族はいません。国はこの先400万人のインバウンドを見込んでいるらしいのですが、その方達は果たして何処に足を運ぶでしょう?日本人がこれまで大切にしてきた生活工芸品を取り揃えて披露する、例えばですが、そんな施設があってもいいと思います。それから「認識が対象に先立つ」という、ある哲学者のことばがあります。認識があるから世界がある。その認識が広がると世界が広がる、という訳なのですが…認識が広がる場所はカフェや書店というリアルな空間だったり、また人と会う/コミュニケーションをとる/旅に出る/本を読むことなどで知らないことを知り、認識は広がるのだと思います。そして時間と場所もしくは空間から、どれだけ自由になれるか? 時間と空間、世界はすべて繋がっているんです。

最後に幸せについて

毎日使っている器だったり、小さなプレゼントだったり、幸せというのは日々の暮らしの中のささやかで劇的な出来事。それから基本的な動作を楽しむことではないでしょうか。着ることや食べることは毎日の繰り返し。それをちゃんと楽しむこと。SNSなどでもひとりひとりの顔が見えるようになって、今は幸せが伝播しやすい、いい時代だと感じています。

森岡督行(もりおか よしゆき)
森岡書店 店主・ブックディレクター

1974年生まれ、山形県出身。神保町の古書店に勤務の後、独立。茅場町で写真集や美術書を主とする古書店を開業。2015年5月、銀座の地に移転。一冊の本から派生する作品を展示しながら、展示期間中その本だけを売る書店に。2017年6月、森岡書店 総合研究所を開設。著書多数。

森岡書店
東京都中央区銀座1-28-15
鈴木ビル1F
03-3535-5020